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本漆喰と漆喰風の塗り壁材の違い

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2020.09.25

漆喰=天然成分100%というイメージを持っていませんか?

漆喰とは、消石灰(水酸化カルシウム)を主な固化材とした、コテで塗る塗り壁材のことをいいます。

しかし、漆喰の表記は法律などで定義されているものではないので、漆喰と呼ばれているものの中には、昔ながらの製法で作られている本漆喰と漆喰調の塗り壁材とが混在しています。

健康や耐久性を重視した漆喰選びであれば、漆喰調の塗り壁材ではなく本漆喰を選びたいです。
本漆喰かそうでないかを見分けるのは、成分表示を見れば一目瞭然です。
漆喰調の塗り壁材は接着剤になる合成樹脂や防カビ剤などの成分が含まれ、見た目だけ漆喰調に仕上がるものも少なくありません。
消石灰を主成分とした本漆喰の中でも、300年変わらない伝統製法で作られているスイス漆喰は、有害な化学物質を含まず呼吸性があり長持ちするのでオススメです。

 

風化と劣化の違い

本漆喰と漆喰調の塗り壁材の違いは、商品そのもののニオイでもすぐに分かります。

合成樹脂のような化学的な接着剤や防カビ剤を必要とする商品は、施工後も多少の刺激臭が残ります。

そして、後述する健康面や耐久性などの機能面以外でも、見た目の違いに大きく差が出ます。

新築時には全てが新しく素材感を気にすることは少ないかもしれませんが、5年、10年が経過した後の壁には違いが大きく表れます。

 

その違いは「風化」なのか「劣化」なのかというものです。

消石灰を主成分とした本漆喰は呼吸する壁で、空気中の二酸化炭素を吸収し100年の歳月をかけて再び石の姿に戻る「風化」を行います。この風化の過程で壁は徐々に硬く丈夫になり、石と同じように高い不燃性を持ちます。

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↑【何度も塗り重ねられて凹凸のついた壁】

10年の経過後でも、家の動きによる割れや何かが当たってできるような汚れや剥がれ以外には、壁の素材自体には微妙な変化しか生まれません。
一方、漆喰調の塗り壁材は施工直後が一番きれいな状態で、静電気が発生しやすくホコリやニオイを寄せつけ「劣化」します。劣化するまでは表面強度を保ちますが、呼吸性はなく不燃性能も持ちません。
10年も経過すれば主成分の合成樹脂は紫外線による影響などを受け、壁の色や表面は劣化していく一方です。

 

本物の素材に共通すること

日本では1300年、世界では3000年以上の歴史を持つといわれる漆喰ですが、日本では高度経済成長時に迎えた家づくりの近代化で、ほとんど存在感がなくなった時期もありました。

しかし、気候変動や省エネ・健康を背景に気密・断熱などの基本性能を高めている現代の家づくりでは、漆喰や無垢フローリングなどの本物の素材の価値が見直されてきています。

無垢フローリングや紙壁紙、本漆喰などに共通しているのは、呼吸する素材だということです。

呼吸する素材は湿度調整をして快適な室内空間を体感できるだけでなく、DIYで簡単にメンテナンスできるものが多いです。

また、木の木目が1つ1つ表情の違いを感じるように、本漆喰の表情もパターン付けで変化するだけでなく、光の当たり方によって合成樹脂系の塗り壁にはない陰影の美しさが浮かび上がります。そして、オイル塗装をした無垢フローリングと合成樹脂系塗料で塗装したフローリング、紙壁紙とビニールクロスにも、本漆喰と漆喰調の塗り壁材と同様に「風化」と「劣化」に大きな違いがあります。

木や漆喰の家が年数を重ねてあたたかみを増していくのは、本物の素材ゆえの「風化」がなせることでもあるのです。

壁に健康や耐久性がなぜ重要なのか

家の中でいちばん広い面積を占める壁や天井が、住む人に与える影響はとても大きいものになります。

自然素材に比べると合成樹脂や化学物質が含まれる新建材は大量生産が可能で、材料コストも低くなることがほとんどです。また、施工する際にも自然素材には収縮があったりするため、より丁寧な施工を必要とするなど手間がかかることが新建材よりも高コストになる理由です。

しかし、「夏涼しく冬暖かい家」というのは、急激な気候変動や人生100年時代といわれる現代で耐震と同じく家づくりに最も重要なテーマとなりました。

自分たちの暮らす家がどれだけ健康的で長持ちするかということは、いずれも安心だけでなく将来的なコスト(医療費やリフォーム費用など)にも跳ね返ってくるからです。

スイス漆喰は実際にスイスで、メンテナンスを繰り返しながら親子3代まで使える建物に使われてきました。

建材の安全性や住宅の消費エネルギー基準が日本よりも厳しく、新築を建てることに制約の多いスイスでは建築コストも必然的に高くなります。

だからこそ建物自体を永く使うことを前提に、スイス漆喰のような安全で繰り返しメンテナンスできる素材が選ばれてきました。

日本でも珍しくなくなってきた「夏涼しく冬暖かい家」は気密が良く、カビの発生原因になるので冬には建物全体を暖めて低温部をつくらないようにしたり、室内の過乾燥を防いだりする必要があります。

スイスやドイツでは住宅の湿気とカビについては、建物だけでなく住む人の健康への影響が日本よりも問題視されています。日本同様にカビの生えやすい環境にある古い建物のリノベーションも多く、設備や機器だけに頼らず無垢フローリングやスイス漆喰などを使うことで室内の湿度調整をし、アルカリ性の高いスイス漆喰を使うことはカビの抑制を補助する目的もあります。

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もしあなたが健康や耐久性を考えた家づくりを試みるのならば、可能な範囲で本漆喰や紙壁紙・自然塗料など、永く安心して暮らせる本物の素材を加えてみてはいかがでしょうか。
スイス漆喰なら、自分の次の代まで愛着を持って健康で永く暮らせる家づくりのお手伝いができます。

 

 

この記事のPoint!

・漆喰=天然成分100%ではない
・本漆喰と漆喰調の塗り壁では経年変化での見た目の落差は大きい
・呼吸する素材は湿度調整を助け健康な室内空間を作る
・現代の耐久性のある家づくりとスイス漆喰はとても相性が良い