私たちが家づくりを本格的に考え始めたのは、上の子どもが2歳になった時。当時住んでいた賃貸住宅は日当たりが良くなかったのが影響して、湿度が高くてかびが生えやすく、子どもと主人が嘆息気味になったことも気掛かりでした。当初は立地条件の良い中古住宅をリノベーションすれば良いと考えて物件を探していて、決して「新築の注文住宅を建てたい!」という希望から始まった家づくりではありませんでした。しかし都内で中古物件を探してもなかなか条件が合うところに出会えず、土地探しにも選択肢を広げたところすぐに今住んでいる土地とめぐり合うことができ、予算も少しだけ背伸びしたら足りることを知り、自分たちの思い通りに注文住宅を建てることを決めました。
家づくりを始めるにあたって「ミニマムな暮らし」をテーマに、何に予算を振り分けるかということを夫婦で確認しました。優先順位として主人は使う素材や断熱性など、健康面や環境面に関わることを重視し、私は「家族とのコミュニケーション」ができる間取りやデザインを希望しました。そうやってできた家では、例えばリビングの中央に階段があって家族が外からの出入りの際に必ず顔を合わすことができる、リビングとキッチンから家の前の様子が見え、子どもが小さいうちは目が届く中で遊ばせることができる、キッチンを広く取り家族みんなで料理できる、ということが実現できました。
また、リビングは寝る時以外ではいちばん長く過ごす場所なので、壁や天井を自然素材で質感が気に入っていたスイスウォールを塗ることにしました。実際に暮らしてみると、大きな窓から入ってくる陽射しがスイスウォールの白い壁に反射して、天気の良い日はほとんど夕方まで照明を点けることがありません。それに日が沈むとダウンライトのが壁を照らし、漆喰ならではのやさしい明かりを楽しむことができます。以前気になっていた主人と子どもの嘆息の症状はすっかりなくなり、部屋で過ごしている時に空気感の良さを感じられています。工務店さんからはスイスウォールはほとんど静電気が起きないと聞いていて、そういえば料理のにおいが残ったり、壁にほこりがつくというような経験は、今のところないような気がします。
スイスウォールを、家の中だけでなく外観にも使ったのは、家づくりを決めてからいろんな住宅を見て気に入った外観が、ほとんど木と塗り壁の家だったことが大きいです。家族が家の中でいちばん気に入っている場所は、土地の形状(崖地)を生かした眺望の良い4坪のウッドデッキです。オーダーした大きな木製サッシと、リビングが一体化して開放感があり眺めもとってもいいんです。アウトドアリビングとして春から秋にかけて気持ちのいい日はハンモックを吊るし、テーブルやソファを持ち出してデッキで食事をしたり、知人を招いてBBQや公園の借景でお花見やホームパーティーを楽しんだりすることもあります。
都会の中でも自然を感じられる家になり、自分たちの家づくりの参考にしたいという友達が出てくるようになりました。限られた空間での都会の家づくりでしたが、物を減らして今あるものを大事にする暮らしが、かえって自分たちに時間の余裕を生んでいるように思います。